【画像】鉄道と電気技術、2022/5月号
2022-5-29 0時掲載開始
関西私鉄の列車無線(その2)
関西私鉄の列車無線(その1)
近鉄の列車無線系統
過去、上述に関西私鉄の列車無線をまとめておりました。画像の不良がありしまたが、既に手直しをしております。ここで、その後の変化といいますか、近鉄での「近鉄の列車無線系統(2022年最新版)」として、こちらでまとめます。
これは「鉄道と電気技術、2022/5月号」という上述の専門雑誌での引用となります。
業界誌で会員では無料ですが、過去のパックナンバーは、大阪では、難波の旭屋書店でも880円販売されていたりしますので、誰でも入手は出来ます。東京でも書泉の鉄道コーナーでしょうか。
他の列車無線関連のネタは、何れ、追々、購入次第、私感として、記事にしたいと思いますが、まずは近鉄です。
【画像】近鉄の列車無線系統(鉄道ピクトリアル2018-12増刊号時点)
前回のブログと変化した点(一部、前回にも記述)は下記の通りです。
奈良指令系:八木局の新設
大阪指令系:八木局の新設(受信のみ?)
天王寺指令系:尺土局(下記)、橿原局(前回ブログ)、壺阪山局、吉野口局、下市口局の新設と、葛城山局の廃止
名古屋指令系:朝熊局、中之郷局、横山局の新設と、今後朝熊山局の廃止
特に、天王寺指令系での改編が多くなっています。前回が2000年までに設備更新されましたが、スプリアス対応と、設備更新そのものの比較で、見直しということになります。どの鉄道会社も、だいたい20年更新のようですね。
南大阪線となりますが、天王寺、藤井寺、上ノ太子、薬水、尾仁山と葛城山は最初から存在でした。
2000年更新時に、河堀口、古市、川西と増設され、今回で尺土局、橿原局、壺阪山局、吉野口局、下市口局の新設と、葛城山局の廃止に至っています。
葛城山局は、葛城山自体が959mと、大阪府最高峰、生駒山よりも標高が高いため、この見通しの良さで大ゾーン方式だったわけですが、反面、京都市内などの沿線外でも届いていたため、オーバースペックという印象もありました。
冒頭記事では、メンテナンスや故障の際、車で上るとありますが、途中林道を通るようで、荒天時など、労災面で懸念だった模様です。葛城山は近鉄がロープウエーを持ってますが、バックアップの光回線もなかったようで、葛城山局廃止、沿線移設のようです。
【画像】増設された尺土局
御所線方面も対応
奈良と大阪指令系はそれ程変化はなく、八木局の新設のみです。大阪線は受信設備のみかも分かりませんが、送信機能はないようです。従って、奈良系のみとなりそうです。
2000年の更新では、京都線での中ゾーン化が目立っており、京都局のみしか存在しませんでしたが、中間に3局の増設で、不感地帯の解決となったようです。
名古屋は、2000年の設備更新前では、名古屋、塩浜、中川、寅尾山、四郷、青峰、穴川と、石橋、東青山のみだったようです。これが大幅に増加し、現在となりますが、朝熊山局も、葛城山局と同じような理由で、今後廃止となるようです。
これで不感となる、鳥羽線や志摩線で基地局が増加、朝熊局、中之郷局、横山局の新設となるようです。
◆次回更新はデジタル更新だと記述
冒頭記事では、「次回は必ずデジタル方式で更新を行わなければならないだろう」とあります。
実は、今回の更新でもデジタルが検討の記述も、スプリアス対応の早期実現(時間の問題)、車両側で1200局もあり設備更新との時間、他社との調整で、アナログのままで更新だったようです。
時代背景、技術革新等で、次回は私もデジタル化だと思います。
ただ、他の私鉄もアナログ継続のため、同じような理由だったかもしれません。記事に掲載されていたアナログとデジタルの比較となります。
デジタル | デジタル | ||
アナログ 近鉄の場合 |
簡易4値FSK | π/4QPSK | |
可能チャンネル | 1ch | 1ch | 3ch |
内容 | 通話 | 通話 | 通話×2 データ |
伝送方式 | メタル 搬送 | メタル 搬送 | 光 |
データ伝送速度 | 1200bps | 4800bps | 9600bps |
ゾーン | 大(中) | 小 | 小 |
基地局 | 46 | 約200 | 約200 |
アナログは1chしかありませんので、他で重複送信もあります。送信場所の違いによる交信もありますが、指令側がそれを選択出来るような機能があるかは不明です。
普段は1chでも問題はありませんが、人身事故等での事故時は、交信頻度が急に多くなるのが列車無線の特徴ですので、通信が輻輳する訳です。
デジタルでの「簡易4値FSK」は、業務用のデジタル簡易無線と規格はほぼ同じです。タクシーの無線は免許上でもデジタルのみとなりましたが、この無線がこれとなります。一般でも販売されており、免許が必要なタイプと、登録だけで済むタイプがあります。
法人や会社の場合は免許が必要ですが、一方では、それ程も必要とせず、しかし、アマチュア無線では使用不可の業務通信もあり、色々のケースで無線が必要な場合もあります。
それが登録局で、これは個人でも可能です。
例えば、学校やサークルで使う場合に効果があるようです。勿論業務でも利用が可能なため、量販店、警備やパチンコ店、イベントでもよく使われているようです。アマチュア無線では利用が出来ない分野、コレとなりますね。
他に、IP無線は、登録不要、携帯電話の電波を使いますので、全国とエリアが問題ないため、最近は特小より、IP無線が幅を利かせてますが、回線が混雑する場合もあります。
阪神の駅管区では、車椅子旅客等の連絡でこれを使っているようです。
特定省電力無線は、個人で特によく使われる無線で、登録自体も不要なためコストが安価ですが、出力が1Wもなく、0.01Wなため、エリアが限定されます。ただ、量販店のエリアや、パチンコ店の中など、部屋の中だけならば問題はありませんから、今もよく使われていたりします。
近鉄の一部駅で特小使用は確認しています。実に更新頻度が多かったです。上司になる内勤さんも、末端社員さんへの指導が徹底されている印象でした。
ただ、特小は家庭用のコードレス電話のような感じで、駅でも、ホーム端から内勤まで届かない場合もあります。登録局のデジタル簡易無線は、5Wまたは1Wと出力も大きく、近鉄でも、大和西大寺駅では、特小からコレに更新されている模様です。
ちなみに阪急は、アナログのままの373MHz帯業務用無線が、どこの駅でも同じ周波数で使えるような交信でした。
このデジタル簡易無線を、近鉄の列車無線でそのままデジタル化と思って貰ってもいいでしょう。伊豆箱根鉄道で、これでデジタル化という情報が出て来ますね。傍受も出来るようです。
デジタルでの「π/4QPSK」は、JRのデジタル列車無線で使用される方式の一つのようです。データの伝送が可能のため、通告が電子化となったりするようです。関東私鉄のデジタル列車無線化も、この方式になるようです。
デジタルでエリアが小ゾーンとなりますから、エリア毎の個別通信も可能になりますが、エリア内で更に、通話のChも多くなります。JRの通信ではこの威力を発揮しているようです。
近鉄でこの方式は、JRや関東私鉄のようなデジタル化と同じ方法と思って貰ってもいいです。
勿論、現在のシステムのまま、単に、簡易無線の要領でデジタル化も予想は出来ますが、関西私鉄では、阪急を除いてNEC製が採用です。関東民鉄方式は殆どがNEC製のようですので、関西も、関東私鉄仕様となるでしょうか。
小ゾーンか、基地局増加で、LCXを沿線で這わすなど、コストが掛かりますが、通話の安定性は見込めます。一方で、傍受が簡単に出来なくなるのは残念ではあります。鉄道会社の考え方次第でしょうか。
近鉄奈良線を小ゾーン化とするならば、桜川-上本町-石切-奈良/京都-新田辺-高の原-橿原などと、適当にゾーン化は可能でしょう。
大阪線も上本町-大阪教育大前-三本松-西青山と、府県や地下区間を中心にゾーンを分けるのも方法です。もっと細かくする可能性もあります。
◆京阪で一部変化
阪急と南海の設備更新は、前回記事から変化はありません。京阪も既に設備更新済ですが、枚方市局が、設置されていた教習所の位置が(交野線との分岐部分)移転し、再開発エリアとなりました。この関連で、場所自体が移設されています。
具合的な場所はこちらであったのは確認しました。京阪ビルテクノサービスという、関連会社の建物内となります。Googleさんがしっかりと八木アンテナを撮影してくれてます。
但し、再開発で高層のビルとなりますので、枚方市局の移設は、一時的な可能性もあります。大阪方面でアンテナを隠れる形となってしまうからです。京阪が作る再開発なため、完成後は、基地局がこのビルの屋上に、再度移設される可能性があります。
元々、京阪の指令所もここにありましたが、現在は別の場所に移設されています。ただ、指令システムの更新時期(現行は2007年更新)と重なります。関西私鉄では4社共最近更新が多かったため、4社の中ではやや古いシステムとなります。枚方市に戻る可能性もありますが、どうでしょうかね。
◆阪神も大幅変化
大ゾーン方式でしたが、ここもスプリアス対応で見直しが発生し、中ゾーンとなった模様です。
石屋川の受信局が送信対応にもなり、尼崎の基地局で50W→25Wに減力されています。以前は大阪市内や、我が家がある奈良市内まで何故か受信出来ていましたが、現在は環境が厳しくなりました。
オーバースペックは確かでしたし、反面、石屋川では受信が困難でした。適切なシステムの見直しも納得でしょう。この際、車両側でもスプリアス対応機器に無線機が更新され、同時に防護無線が設置されました。
防護無線は、近鉄の仕様をそのまま阪神で採用されています。要するに、1000系での機器を、他の系列でも搭載し、機器を共通化させたみたいです。このため周波数も共通ですが、反面、枚岡-石切間は高台なため、ここで防護無線が発報だと、阪神線内でも届いてしまうようです。