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【画像】2020年駅改良工事前の大和西大寺駅

2020-7-16 22時掲載開始

近鉄奈良線、移設で合意【NHK】

ご存じ、近鉄の要となる駅、大和西大寺駅、私の独断と偏見ですが「大和西大寺駅を制するものは近鉄を制する」と言っても過言ではないでしょう。鉄道の運行管理システムの設置も、1986年で、大和西大寺駅周辺(東生駒-奈良、高の原-平端)の、信号扱いの自動化を実現させるほどです。

この、大和西大寺駅周辺の高架化と、奈良線の移設、県と近鉄で合意というニュースには驚愕しました。たまたま夕食時、NHK奈良の地方ニュース番組「ならナビ」を見ておりましたが、県知事が記者会見で明らかにしたようです。

奈良県HPにその詳細はまだ出てませんが、県と近鉄で「合意」ですから、事は重大でしょう。但し、まだ「決定」ではありません。許認可や設計、建設業者の入札、JV(ジョイントベンチャー、共同企業体)選定、そして最大の問題は予算の調達と議会承認等もありますが、しかし、大きな一歩であるといえます。
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【画像】近鉄奈良線移設の奈良県案

Google地図引用ですが、まず移設に関しては、奈良県案ですが、まとめると、上のような地図とみられます。

「朱雀大路(すざくおおじ)」
は仮称、国営歴史公園化となった、平城宮跡最寄りの駅となりそうです。近くは主に住宅地、ジョーシン奈良店やコーナン、後はラーメン店がある場所となります。

朱雀門前交差点の南側は、かつて「積水化学工業」があり、現在は更地になっていますが、県、市、積水化学工業で跡地活用の協定はされています。

今年か去年で、奈良市役所の移転候補地にもなりました。結局は交通の便や予算でこの案はなくなり、現市庁舎の耐震補強工事となりましたが、この時の県知事の市への強力なプッシュは、報道を見ても相当だったようです。

今思うと、この近鉄奈良線移設の伏線だったかは不明も、結局の所はこの空き地を、県も市も生かしたいのでしょう。駅新設でアクセスもよくなりますし、バス停はあるものの便数は多くはないため、もし駅が出来たら、改善することでしょう。



「新大宮」
県の案では単純に移設、地下化となります。

恐らく、市役所にやや寄った位置になるかもしれませんが、今の位置では、市役所もミ・ナーラも、徒歩で10分は掛かります。また、現状新大宮駅近くの「新大宮1号踏切」も開かずの踏切の一つです。これは、朱雀大路周辺の「大和西大寺1,2,4号踏切(※3号と朱雀門は歩道専用)」も同様です。

「油阪(あぶらさか)」
仮称です。1914/4/30の上本町-奈良間の奈良線開業(当時の大軌)から3ヶ月後の7月に奈良駅前として誕生、地上駅時代に油阪駅存在も、地下化により、同時に1969/12/9で廃止となってますが、これを復活することになります。

JR奈良駅と徒歩圏内となり、もし復活ならば、乗り換え駅としては便利になりそうです。奈良交通のバス停で「油阪船橋商店街」がありますが、商店街は駅廃止で廃れてしまった歴史があります。

ですが、新大宮を除く新駅は、近鉄では「全くの白紙」というコメントがNHK報道で出てます。県側の案が報道で先走った感じですね。
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【画像】大和西大寺駅奈良方ホーム端は、車庫の配線と絡み、複雑怪奇な線路です。
もし移設となれば、奈良からやってくる列車も、景色が変わることでしょう。

▼西大寺車庫の一部機能移設が必要となる
移設で、地上と、地下隧道とのアプローチも必要でしょう。これが西大寺車庫の用地内とみられ、車庫機能も一部が移転になるだろうと予想されます。

現状、京都線の宮津車庫は、北部が留置線、南部は1線のみで、用地にも余裕があり、廃材などが放置されるなどで持て余し気味です。移設となれば、留置線増設は確実でしょう。

西大寺車庫は、検車機能や車輪転削設備、そして、近鉄運輸部門の教習所も存在しますので、車庫の完全移設は、ダイヤを考えても現実的には考えにくく、留置線の移設がメインとなるでしょう。
私鉄車両編成表2020
交通新聞社
2020-07-15


▼駅増加で快速急行の停車駅がどうなるか
現状快速急行は大和西大寺-新大宮-奈良と各停です。昔は新大宮も通過でしたが、2000-3-15で停車化、10両ホーム対応化によるものです。県の案では、駅が増加にやや迂回で移設となることから、所要時分が増加するのは確実です。

そして特急列車もありますから、もし移設等が決まれば、今後のダイヤ作成で大きな影響となるでしょう。

立体高架化は踏切廃止など、道路主体の工事であるため、鉄道会社都合による負担は少なく、殆どが国や都道府県などの自治体負担のようです。このため、原状復帰の考え方で、線路配線は地上駅時代を踏まえたのが基本となる模様です。

特に新大宮駅は待避駅ではなく、2面2線の駅ですので、2面4線で移設後の待避駅化ですと、線路増加分が鉄道会社都合(受益)となる場合も考えられます。

近鉄側は「費用負担は生じないようにしてほしい」とありますから、近鉄は移設等は毛頭なく、現状設備、路線維持が基本的な考え方となります。そりゃあそうでしょうね。
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【画像】奈良方面を見る
駅構内にも留置線や折返線が存在、10-11-下り線-9号線となります。

▼大和西大寺周辺の高架化も案として
次に、大和西大寺駅周辺の高架化も示されていますが、大和西大寺駅構内は、奈良市で約27億円の予算で、橋上駅舎の増築や周辺工事で、今年、完成となっておりますから、個人的にも、現実的にも駅構内の高架化はないでしょう。

奈良市側で予算を調達し完成させておりますので、駅の高架化ですと取り壊しとなり、色々と問題です。綺麗な駅に生まれ変わりました。主要駅らしい雰囲気です。

駅が高架化にならず、駅の前後が高架橋となった例としては、JR中央線の三鷹駅はその例でしょう。三鷹-立川間の高架化も、駅部分は地上のまま残りました。またこの駅は車庫(三鷹車両センター)も存在し、大和西大寺駅と似た感じです。

大和西大寺周辺は列車が常に輻輳します。駅以外、周辺部の高架化は有でしょう。特に駅の西部付近は、高架化となれば、民家の立ち退きや補償など区画整理も必要ですし、この付近には変電所にセクションも存在します。仮に、菖蒲池、高の原-平城付近から高架化の場合、相当な工事となるのは確実で、用地買収も手間が掛かるでしょう。

即ち、この周辺部で「開かずの踏切」区間があるため、高架化は今までの課題も、なかなか実現出来ずでした。移設合意と高架化浮上で、行政が重い腰を上げたことは、むしろ評価すべきでしょうか。
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【画像】平城宮跡付近を走行する、しまかぜ「お召し列車」SV03


▼費用問題
JR奈良駅高架化は、約498億円の予算だった模様です。工事中にも遺跡等発掘で事業費が増加してますので、2002年着手、2008年大和路線高架化、2010年桜井線高架化も、8年の時間が掛かってます。

今回は移設と高架化がセットの案となり、費用問題はそれ以上掛かるのは確実でしょう。但し、開かずの踏切問題の一挙解決となれば、相当な費用が掛かっても、その経済効果も大きくはなるとされます。それが公共事業でしょう。




▼今後
何れもまだ「決定」ではありません。当方の予想もありますが、仮に上手く話が進んでも、完成は中期的、10年先でしょうか? リニアの名古屋-大阪間で、法律が決まっている「奈良市付近」の駅がどこになるかも決まっていませんが、それをも見据えたのは言いすぎでしょうか?

ともあれ、基本は「踏切解消」の公共事業です。地元民の私も、元々、周辺部の道路事情は良くなかったため、いずれにしても最善の方向になればと思います。

参考文献「近畿日本鉄道100年のあゆみ」