【画像】2013年時点で設置のデジタル無線機の受話器(三菱電機製)
(※尚、これと接続する本体が別にある)
電源ボタンは入切共に長押し、暫くすれば各ボタンなどが一斉点灯、それまでに設定していた内容で使用可能となります。電源は、防護無線と一体化の模様。

2017-4-26掲載開始
2017-5-6更新---同日、米原~姫路間アナログ4Ch→デジタル4Chに切替の模様
2017-8-10更新---湖西線と奈良線のデジタル化

JR西日本での列車無線デジタル化ですが、恐らく、環状線の103系が引退した後に順次切り替え、でしょうか。
但し、JR宝塚線(尼崎-新三田)を先行して、1/18時点でデジタル化となっています。脱線事故区間の関係(聞きづらいのも事故時の問題ではあった、こちらの事故調報告書付図30を参照【PDF】して下さい)で真っ先に切り換え、とみられそうです。

他の線区も、そろそろデジタル化も近い模様ですので、もう、掲載してもいい内容では、ということで、下記、色々とまとめました。

鉄道無線を聞いてみよう (三才ムック vol.557)
三才ブックス
周波数等、具体的な傍受方法はこの本を入手されると
分かりやすい記述があります。
レシーバー等の情報も有 
(アマチュア無線機は免許が必要ですが、
レシーバーは免許は不要です。) 
携帯時刻表 2017年 04 月号 [雑誌]
交通新聞社
交通新聞社

◆アナログ列車無線
その前に、現在のアナログ列車無線(いわゆるB型区間)を、この際にまとめることにしました。家電量販店や無線ショップ等で売っているレシーバー等(免許が不要、アマチュア無線機は免許が必要)で傍受してみると、「ピー」という、2250Hzのサイン波(制御信号)が流れていますが、これが常に、24時間送信されています。

通話状態となる前、一瞬、1960Hzのサイン波が2~3秒程流れ、指令と列車で会話が出来る状態となります。

関西私鉄のような大出力(10W,25W,50W)ではなく、JRの列車無線B型タイプは、3Wと小出力となっています。このため、駅毎に基地局が存在します。駅と駅の間が長い場合は、JR神戸線の大阪-塚本間、下淀川鉄橋付近など、駅間でも基地局が設置の場合もあります。トンネル区間や不感地帯でも、LCXケーブルの設置で通話がいつでも出来るシステムです。

【画像】駅での基地局の例(JR郡山駅)
このような八木アンテナが2組、両方向で設置されている。

アナログからデジタルに変わると、出力が3W→4Wに少しだけ強くなるようです。F3Eとあるのがアナログ、G1D,G1Eとあるのがデジタル波です。これは基地局となります。

移動局、即ち列車側の無線機は、アナログでは1Wと弱く、駅間で通信する場合は雑音混じりとなってしまう場合もあるようです。デジタルの場合は300mWと更に弱くなりますが、アナログとデジタルは電波の特性が違いますので、要は、携帯電話の出力程度と思うと、分かりやすいでしょうか?

続いて、チャンネルです。アナログは5Ch分存在し、路線や区間によって、手動でチャンネルを切り換える(デジタル化以降も手動切り換え)ことになります。

その上で、「ゾーン」というものが存在します。つまり、同じ路線で、地域エリアを複数に分ける訳です。これを、トーンによって3種類に区別され、識別します。

以下、当方が下記に調べた、各路線のゾーンエリア一覧です。

1Ch     トーン  
奈良線(A1→D6Ch) 京都 城陽 88.5Hz 8/9までデジタル化
奈良線(A1→D6Ch) 長池 木津 107.2Hz 8/9までデジタル化
大阪環状線、ゆめ咲線 全線区間   88.5Hz  
2Ch        
学研都市線 木津 京橋 88.5Hz  
東西線 大阪天満宮 尼崎 107.2Hz  
湖西線(A2→D2Ch) 山科 近江今津 88.5Hz ※山科構内は4Chとなる、近江今津以北はB型ではなくC型入換が正解(確認済) 
6月中頃デジタル化
3Ch        
宝塚線(A3→D3Ch) 尼崎 新三田 131.8Hz 2017/1/18デジタル化 
阪和線 天王寺 北信太 88.5Hz  
阪和線 北信太 和歌山 107.2Hz  
4Ch        
琵琶湖線(A4→D4Ch)
東海車の対応で、米原駅構内のみC型アナログ存置の模様
米原 近江八幡 88.5Hz
2017/5/6デジタル化 
琵琶湖線(A4→D4Ch) 近江八幡 草津 107.2Hz 2017/5/6デジタル化
琵琶湖線、京都線(A4→D4Ch) 草津 高槻 88.5Hz 2017/5/6デジタル化
京都線、神戸線(A4→D4Ch) 高槻 立花 107.2Hz 2017/5/6デジタル化
北方貨物線区間を含む
神戸線(A4→D4Ch) 立花 明石 131.8Hz 2017/5/6デジタル化
神戸線(A4→D4Ch) 明石 姫路 88.5Hz 2017/5/6デジタル化
岡山車はC型か?
山陽本線
(※試験用のデジタル化は未確認) 
網干総構内   131.8Hz 試験用
おおさか東線 久宝寺 放出 131.8Hz  
福知山線 福知山電車区構内   トーンなし 試験用
北陸本線 金沢総乙丸   未確認 試験用
5Ch        
大和路線 加茂 三郷 88.5Hz 加茂構内で亀山車はC型 
大和路線 三郷 JR難波 107.2Hz  
嵯峨野線 京都 馬堀 131.8Hz  
嵯峨野線 馬堀 園部 88.5Hz  
関西空港線 日根野 関西空港 131.8Hz 日根野構内は3Ch

このようになります。

要するに、いわゆる東海道・山陽線区間では長距離となりますから、地域によって6ゾーンに分かれることになり、エリア毎で1通話が出来るということになります。

中には、環状線、ゆめ咲線のように、全線で1ゾーン1通話の場合もあります。

試験用というのは、無線機本体の試験のボタンを押し、試験良のランプが付いたら、通話が出来るということになります。いちいち指令を呼び出して開局試験・通話試験をするやり方ではなく、単純な方式です。
列車側の局の数も多いのと、列車無線も、緊急性優先、必要最小限かつ簡潔な通話が求められますから、指令を呼び出した通話試験は、無線機本体の取替のみの模様です。(分割併合時や出区時の通話試験等をする場合、B型ではなく、C型の乗務員無線を使用することが多い)

傍受をしていると、「ピー」から一瞬「ポー」となるのが目印で、800Hzのサイン波となります。

鉄道ファン 2017年 06 月号 [雑誌]
交友社
交友社
Rail Magazine (レイル・マガジン) 2017年6月号 Vol.405
ネコ・パブリッシング
ネコ・パブリッシング


【画像】LCXケーブル

ゾーンの切り換え区間となれば、LCXケーブルが沿線に設置されている場合があります。太い恵方巻のようなケーブルとなりますが、この継ぎ目でゾーンが切り替わります。

この区間で通話している状態の場合、走行中、ゾーンが変わってしまうと、強制的に通話が切れてしまう欠点がありますので、JRの場合は、実質的な目印となる場合があります。

アナログ列車無線は……
▼仕組みが簡単
▼列車側の無線機本体も小型
がメリットとなりますが、デメリットとしては
▼第三者の傍受がされやすい(※但し、傍受そのものは電波法上では違法ではない、この内容を漏らすことが違法)
▼雑音が発生しやすい
▼1ゾーン1通話しか出来ない
▼通話のみでデータの通信が出来ない

これはJRのB型での場合ですが、こうなると思います。

【画像】列車無線のデジタル化対象線区(橙色区間と緑色区間)

◆デジタル列車無線
アナログだった列車無線のデジタル化、その理由としては…

▼上画像の橙色区間で、アナログ列車無線の運用開始が国鉄時代の1986年と、設備そのものの老朽化
現在は2017年ですから、31年経過の、単純な設備更新
▼通話品質の向上と回線の増加(1回線から2回線)
デジタル化により雑音がなくなり、1回線が使用中でも、もう1回線で通話することが可能
▼データ通信の実現
通告の送受信や、他の列車の列車在線位置など、データの伝送・通信が出来るようになる(※別途、液晶画面がある)
▼一斉放送
沿線イベントなどの営業情報、他社線の運行状況などを一方的に伝え、聴いた乗務員は乗客に伝える場合も
▼通話そのものの秘話化
第三者の傍受がほぼ不可能となる、通話内容の保護等
▼防護無線を発報した列車の識別
冒頭画像の無線機受話器にあるように、防護無線を発報した列車の識別機能がある模様です。(液晶画面の列番設定器から、発報した列番を指令の画面に通知出来る仕様か?)


このように、アナログと比較してもメリットが多いため、2011年位から基地局の設備更新、検査時での列車側の無線機の積み替えなど、時間を掛けて工事を行い、これが今年、順次運用開始、ということになります。

基地局は、現存設備にデジタル設備の追加ではなく、丸ごと交換のようです。つまり、デジタル対応の設備でも、ソフトウェア上ではアナログでも対応させることで、デジタル切り換え後のアナログ設備の撤去工事の不要化、切り換えの単純化のようです。なので、デジタル切り換え後は、無線局の免許上で、電気通信監理局の申請上、アナログの記述を削除(※電波方式の変更)するだけとなります。

詳しい内容は下記画像です。
下記PDF、現在ではネット上にはない模様ですので、手元の資料をこちらで掲載します。
クリックすれば拡大画像がご覧になります。



関西圏では、上画像のエリアで一斉にデジタル化となります。緑色線区間ではアナログで存置ではなく(過去、緑色区間は当方アナログ存置と勘違いしておりましたが、アナログ存置ではありません)、一斉となります。このため、アナログ設備が一番新しいおおさか東線では、2007年からのアナログ設備を、僅か10年で置き換えることになります。

エリア外は、乗務員無線のC型で、アナログのまま存置となります。和歌山線、桜井線、関西線気動車区間、草津線、加古川線や播但線、北陸線、そして姫路以西に、福知山支社エリア、紀勢線となります。
(※JR神戸線でも和田岬線区間と、羽衣線は、デジタル化対象のエリアとなる。JR貨物が路線として保有する区間は不明<吹田貨物ターミナル~大阪貨物ターミナル間など>)

また、現在建設工事中で、2019年度末開業予定な、おおさか東線区間の新大阪-放出区間は、最初からデジタルエリアということになります。

つまり、JR西日本のB型列車無線区間全区間が、デジタル化ということになります。
(乗務員無線のC型は、全国のJRで共通波のため、今後も残る。エリア外での指令との通信もそのまま)

【画像】アナログ列車無線機
画像左側の黒い箱がそれです。

【画像】アナログ列車無線機
同じ位置にあるアナログ列車無線機でも、色が緑色の場合もありました。221系奈良車では、他にも白色の場合もありましたが、既にデジタル機に取替となっています。

ちなみに221系でも、初期、ATS-P設置後と微妙に運転台の仕様が異なるカ所があります。網干車のATS-P設置は1990年代後半と遅く、装置も初期の1型(生え抜きの221系奈良車の場合、但し、現在は3型に更新)ではなく2型(上画像)のため、仕様が異なります。

223系網干車の一部では、これと異なるアナログ無線機もありました。チャンネル表示がデジタル表示式の仕様でした。他にも、このようなタイプもあります。

【画像】こちらは207系の場合です。左側受話器の下がアナログ列車無線機です。
207系は4+3両のため、現在では使用しなくなった中間の運転台は、デジタル列車無線開始後も、アナログ列車無線機のままです。

このため、和田岬線103系の代走時に、3+3両の207系が運転される場合が希にありますが、3両のクモハ側が、兵庫-大久保間も含め、先頭に出ることになりますから、もしかすると、一部の編成に限って、中間運転台にもデジタル列車無線が設置の可能性があります。
(※当方は未確認です。)

【画像】105系運転台
千代田線や常磐緩行線の足跡を残す、CS-ATCの速度計(※車内信号式)だったのも、興味深い運転台だったりしますが、左上がアナログ列車無線機で、C型乗務員無線のみ対応するタイプです。

B型と、デジタル列車無線には、確認しましたが、現在も対応していません。 本体がこれのみのため、屋根上のアンテナ線と接続する簡単な仕様です。

どうも、呼び出しボタン(指令を呼び出す際に押す、マイクにある緑色のボタン)を、指令に呼び出す前に押す乗務員が意外と少なく、そのまま送信ボタンを押して、声で指令を呼び出す場合が目立ちます。こうしたシステム上の都合で、指令側も列車側からの呼び出しに気が付かない場合も多くありますね。

このC型自体、出区時や併合時等の通話試験以外、それ程の交信頻度ではありませんし、事故などの指令交信も、乗務員さんに貸与されている業務用電話で対応するケースが目立ちますし、その方が、僻地でも通じる場合が多い(C型乗務員無線では特に駅間では通じにくいことが多いので、JR東日本の地方線区(新潟・仙台・長野・千葉支社管内等)のデジタル列車無線化推進も、これが影響か?)ようです。

また、傍受しているエリア以外の通話は聞こえない場合も多く、基地局で個別の通信が出来る仕様でしょうか。

週刊ダイヤモンド 2017年 3/25 号 [雑誌] (国鉄 vs JR)
ダイヤモンド社
ダイヤモンド社

◆影響等
まず、エリア内に乗り入れる、他社車両の場合です。まず、JR貨物の機関車等での、列車側の無線機更新が必要となります。続いて、特急ひだ(大阪-飛騨古川)、この列車は、JR東海の車両となりますから、キハ85系での無線機更新が必要となります。

但し、米原駅構内は、東海車でのアナログ列車無線搭載車両対応で、B型のまま残る可能性もあります。米原駅構内が西日本管理となり、東海区間の東海道線はB型アナログで残るためです。

続いて、関西空港線、南海電車が同じ線路で乗り入れとなりますが、こちらは、別途南海用の周波数がありますので、問題はありません。それぞれの周波数で運用するためです。

そして、アナログ無線機のみ搭載するJR車両、例えば、105系や117系の新在家車でしょうか。
走行線区は乗務員無線C型アナログ区間のみですが、吹田の検査入場時、日根野支所での車輪転削時の問題ですが、どうも、デジタル区間でも、乗務員無線のみ指令と通信できる感じで残す模様です。つまり、完全デジタル区間でも、乗務員無線としては、バックアップとしてなのか、どうも残す感じでしょうか?
(亀山車の奈良支所車輪転削も、C型存置は同様か?)


車両側の無線機取替は、2017年4月で、ほぼ、完了した模様ですが、冒頭のように、環状線の103系が、まだアナログのまま残っており、この引退を待ってから、順次、デジタル切り換えも予想出来ます。

これらのプロジェクトも、脱線事故による安全性向上の一環となりますし、JRの場合は、傍受をしていても、文中にも書きましたが、雑音等で聞き取りにくい場合が日常の場合もありまして、さらには、事故時の、通話による通告も時間を要している上、通話が長くなる場合や、乗客の個人情報がある場合は、業務用携帯電話に掛け直す場合も多くあり、デジタル化が必要かつ必然的だったのでしょう。

愛好家側が傍受する側は何も聞こえなくなりますが、これも、仕方ないのかもしれません。

鉄道の旅ノート 乗りつぶし記録帖 2017~2018 (ブルーガイド・グラフィック)
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