【画像】南海線、樽井-尾崎間の信号配置など

2017-11-3掲載開始
2017-11-4更新

南海線、樽井-尾崎間で、細かい信号機の配置は、上記の通りです。上下線共4閉塞区間となっておりますが、上り線を利用した場合、信号機はそのまま、現状の設備となりそうです。

下り線は、上り線を利用して単線運転となりますので、別途、代用手信号か、出発信号機の設置が必要となりまして、樽井3番に臨時の出発信号機、尾崎手前の臨時場内信号機に、1,2番線入線対応と、設置された模様です。但し、上り線に対する下りの、臨時の閉塞信号機までは、まだ確認していませんが、情報では、設置されず、1閉塞区間扱いの模様ですね。

詳しい動画も、既にYouTubeで上がっており、便利な時代となりましたね。

臨時の信号機は、2日の時点で運用開始の模様ですが、1日の時点では開始されず、代用手信号のよるものだった模様です。で、代用閉塞方式として用いられたのが「指導通信式」と呼ばれる方法です。

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指導通信式は、複線区間で1線が不通となったときに施行する

このうな考え方となっております。上図「常用閉塞方式」は、信号機が生きている場合(通常時)となります。

上り線はそのまま、自動閉塞式となりますが、上り線も、自動閉塞式と、代用閉塞方式両方、指導通信式で施行ですね。即ち「併用」となります。上り線の上り列車走行は、信号機が生きているため、同じ方向の列車の場合は、併用が可能と定められているようです。

上り線を使った下り列車の場合、臨時に設置された信号機が使用されていない場合、「代用閉塞方式」となり、単線運転となりますから「指導通信式」となる訳です。(臨時に設置された信号機の運用が開始された場合は、「自動閉塞式」となります)

指導指令式の場合がありますが、樽井-尾崎間、南海指令側の管理ではなかった模様ですので、指導通信式だった模様です。


これらは、運転士さんが教習の時に習う訳ですが、手元に資料(運転規則)がありますので、これらを引用します。

手元の資料は、鉄道部品店で購入したこれです。規則は会社が違っていても、それ程変わりませんので、これを引用します。

指導通信式の条件-まず、それを実施する閉塞区間で、1人の指導者(この場合は適任者=助役)または指導券と、それぞれの駅で専用の電話機(通信手段)を選定し、「指導通信式記録簿」や、筆記具を用意し、記録する必要があります。

「指導通信式記録簿」は、受領時刻、区間、相手方の閉塞取扱者(樽井の場合は、尾崎駅にいる助役)、閉塞取扱者(樽井の場合は自分の名前)、指導者の記入欄に、到着・出発列車の列番、閉塞承認、到着、閉塞解除などの項目があり、必要の度に記録。

閉塞取扱者-代用手信号の手旗を持つ役割も兼ねる

   指導通信式記録簿
     
     
1 指令受領時刻  時  分
2 指令区間 樽井-尾崎
3 相手方閉塞取扱者 尾崎駅にいる助役氏名
4 閉塞取扱者 樽井駅にある助役氏名
5 指導者 添乗助役氏名

指導者は、その閉塞区間の列車で、乗務員室に添乗する助役の名前となります。その指導者は、「指導券」と呼ばれる、駅長が記入した券を受取って、指導者と指導券を所持して、初めて、閉塞区間で列車が運転出来る、ということになります。

指導者-列車に添乗する助役
指導券-代用閉塞方式での、いわば「通行手形」のようなもの
これは、どちらか一方あればok
指導者を、タブレット(通票)で代用できる場合もあるようです。指導者は要するに、人間タブレットのような感じです。

指導券  
区間 樽井 尾崎
列車番号    
発行日    
駅長名    
   

分かりやすく指導券の様式をまとめると、このような具合で、外縁が赤色の線のようです。ただ南海の場合は、通告券の代用手信号欄で、この記入として、指導券の代わりだった模様です。
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【画像】通告券の例(神戸高速鉄道)

列車に添乗する指導者は、専用の腕章をする必要がある模様です。この動画も出て来ましたね。駅長が運転士にこの指導券を交付、確認後、腕章をした助役が、動画でも乗り込んでいるのが分かります。

駅長は、電話ではなく、無線機で確認しています。電話でも無線機でも、通信手段=通信さえ出来れば問題ないということでしょうね。

樽井-尾崎を無事に代用閉塞間を過ぎれば、運転士が持っていた指導券は、相手駅の駅長により回収となります。回収した指導券も、単に破らずに、赤で×印を付けるなど、厳密な決まりがあるようです。

この、受領の際も、数分程度の時間を要していることになります。時刻通り運転していても、受領が完了するまでは列車が動かせませんので、遅延となります。ですので、11/1の十数分の遅延も、こうした影響があったかもしれません。

指導者、指導券はどちらか一方でも問題ありませんが、南海の場合は併用で完全を確保した模様ですね。ただ、通告券による代用手信号欄の記入を、指導券の代わりですので、優先度は、指導者の添乗でしょうか?

臨時の信号機の運用が開始されれば、こうした手作業による閉塞区間の走行手続きが、当然ながら不要となります。指導通信式は、安全面も他、適任者の人件費や手間も掛かりますし、臨時の信号機が建植されれば、その方が確実・安全です。

樽井-尾崎間の助役の添乗は暫くの間、あるかもしれませんが、少なくとも、指導券の交付・回収や記録簿を付ける必要がなくなり、指令側もしくは駅の信号所による制御となります。

これらは、どの鉄道会社でも、ほぼ同じような決まりのようです。
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鉄道信号・保安システムがわかる本
中村英夫
オーム社
信号保安・鉄道通信入門 (鉄道業務セミナー)
菱沼 好章
中央書院
図解鉄道知識
鉄道教育研究会
君見ずや出版
鉄道ダイヤを支える技術
梅原 淳
秀和システム


通信式
-複線の場合、信号機の故障などがあり、自動閉塞式が出来ない場合、こちらは、記録簿の記録のみで、指導券の交付や指導者はありません。複線の場合、片側の線路で同じ方向ということになるからです。

しかし、最近は信号が完全に復旧するまで、列車を動かさない方法が優先の場合もある模様です。その方が、より安全かもしれませんね。JR西日本の場合は、通信式も指導通信式もやらず、信号の復旧を優先する考え方の模様です。

指導と付けば、指導者または指導券どちらか一方、必要となる訳です。

指導隔時法、隔時法
-通信手段が確保出来ない場合、その他のやり方は、通信式、指導通信式と同じ模様ですが、この他、間隔調整で、時間の確保や制限速度などが決まっている模様です。これは、最近の携帯電話の普及に、無線機もあり、滅多にないでしょうが、万が一の方法としてあるようです。

その他
▼運転士は、駅長以外から指導券は受け取れない
▼運転士は、指導券の使用が終わった時は、駅長に渡す必要がある
※駅長が助役による場合もある
▼出発をやめるときは、添乗の指導者を降ろすか指導券を取り戻す
▼添乗の指導者がいない、もしくは指導券を渡さずに出発した場合、気が付いた駅長は…
指導者がいない場合、指導券を渡さなかった場合、相手駅の駅長にそれを伝え、指導者を途中まで走らせる、指導券を渡す
それに気付いた運転士は、すぐに停止をさせ、駅長の指示を待つ、停止した場所が向かう駅に近い場合は、その駅でも可
▼指導券を列車の走行中に落とした場合は、停止させて探し、拾う必要がある。但し、簡単に拾えない場合は、そのまま運行して相手駅の駅長に報告する

伝令法-故障車の救援のために別の列車の運転、工事列車がいる区間でさらに別の工事列車を運転させる。
ただし、伝令法は、上記の代用閉塞方式、閉塞準用法とは全く異なる考え方となります(自動閉塞方式での、1区間1閉塞2列車以上の走行となる)

これにしても、指導通信式の施行は、滅多にない事例だと言えます。運転士さんが教習で習っても、実際に施行する例は、貴重とも言えます。

勿論、一日も早い、南海線の上下線の開通が望まれるところではあります。